前臨床薬物動態(PK)試験において、血漿中の薬物濃度を正確に測定することは、候補化合物の評価に直結します。LC-MS/MSはその高感度・高選択性から、現在の標準的な手法となっていますが、前処理の選択や内部標準の設定を誤ると、見かけ上は問題なくても信頼性の低いデータが生成されることがあります。
前処理方法の選択 ¶
血漿サンプルの前処理には、タンパク沈殿(PPT)、液液抽出(LLE)、固相抽出(SPE)の3つが主に使われます。PPTはアセトニトリルや酸性メタノールを加えるだけで操作が簡便ですが、マトリックス成分が多く残るため、イオンサプレッションの影響を受けやすいです。SPEはマトリックスのクリーンアップ効果が高く、感度が必要な場合に有利ですが、操作が複雑で回収率のバラつきに注意が必要です。化合物の物性と要求される定量下限値を考慮して選択します。
内部標準の選択と重要性 ¶
LC-MS/MSの定量では、安定同位体標識内部標準(SIL-IS)の使用が推奨されます。SIL-ISは分析対象化合物と化学的性質がほぼ同一でありながら、質量が異なるため、前処理中の回収率変動やイオンサプレッションの影響を補正できます。d4-カフェインやd5-ジクロフェナクなど、市販のSIL-ISが入手できない化合物については、構造類似体を内部標準として使用することもありますが、その場合はマトリックス効果の評価を慎重に行う必要があります。
検量線の設計と範囲 ¶
検量線は、予想される血漿中濃度範囲をカバーするように設計します。一般的に、定量下限値(LLOQ)から定量上限値(ULOQ)まで、少なくとも6〜8点の検量線ポイントを設けます。ICH M10ガイドラインでは、各ポイントの真度が±15%以内(LLOQは±20%以内)であることが求められます。検量線の範囲外のサンプルは希釈して再測定するか、希釈直線性を事前に確認しておく必要があります。
マトリックス効果の評価 ¶
マトリックス効果(イオンサプレッションまたはエンハンスメント)は、LC-MS/MSの定量精度に影響する重要な要因です。評価方法としては、後カラム注入法やマトリックスマッチング法が使われます。CoreLab DEXでは、バリデーション時に少なくとも6ロットの異なる血漿を用いてマトリックス効果を評価し、SIL-ISで補正した後の変動係数(CV)が15%以内であることを確認しています。
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